サイエンスカフェChofuは、電気通信大学と調布市の主催、電気通信大学同窓会「目黒
会」の共催により平成29年度から開催しています。
このイベントは、電気通信大学や近隣の大学・研究機関の研究者を講師に迎え、参加者
が、幅広い科学に関する知識を深めるだけでなく、自由な発想で互いのアイデアについて
講師と気軽に話し合い、交流を深めることを目指します。
また、令和元年度からは「調布市大学プラットフォーム」が新たに共催者に加わり、参
加大学による講師・会場の下で開催するなど、更なる充実に向けた発展を遂げています。
令和2年1月の第14回開催以来、コロナ禍により約1年間の休止を余儀なくされましたが
(令和2年3月の第15回は中止)、今回、初めてオンラインで開催しました。
令和3年1月9日(土) 14:00~15:30
オンライン開催(Zoom を使用)
市民の方 27名
斎藤 弘樹(電気通信大学 情報理工学研究科 基盤理工学専攻・教授)
AIで物理学
今回は、電気通信大学の斎藤弘樹教授を講師として、「AIで物理学」をテーマに話をし
ました。初めてのオンライン開催ということで、冒頭、Zoomの使い方について講師から
簡単な紹介を行った後に本題に入りました。
現在、講師の専門である物理学分野においてAI(人工知能)が活用されつつあります
が、そもそもAIとは何かということで、既に一般的に活用されている事例の紹介から講
演ははじまりました。
そして、AIにおいては、非常に多種多様な(そして曖昧な)入力値に対して、適切な
出力を与えるという仕組み作りが1つの課題となっており、その実現には、ニューロンが
複雑なネットワークを形成する人間の脳を模倣した、人工ニューラルネットワークに基
づく深層ニューラルネットワークにおいて張り巡らされた線の強さである「重み」を調節
(=機械学習)することが必要となることを説明しました。
続いて、AIの物理学への応用例を紹介しました。1つ目に、物理系の制御例として、
逆さ振り子の制御や量子渦の制御について、実際の学習計算デモや動画を交えながら紹
介しました。2つ目は、量子多体問題などの量子力学の難問を解く応用例について、3つ
目は、物理系の状態(相)を見分ける・分類することへの応用例について紹介しました。
4つ目として、物理法則や新概念をAI に発見させるという究極の目標について
説明しました。これは実験で測定される値と質問を入力し、正しい答えが出力されるよう
にAI に学習を行わせることで、その過程で新しい「概念」を抽出することが可能となるというもので、例としてコペルニクスが唱えた「地動説」をAIが実際に発見する様子を、
動画を交えながら説明しました。
最後に、上記のように、AI技術が物理学の研究に応用されつつあるが、現状、AIの出
現は物理学にとって「革命的」というほどではないが、将来、「革命」はやってくるので
しょうかと参加者に問いかけ、講演を終了しました。
参加者からは、講演中・講演後にチャットを通じて講演内容に関する様々な質問が投げ
かけられ、講師との活発な意見交換がなされました。
サイエンスを介した新たな交流を生みながら、本会は盛況のうちに終了しました。なお、
今回は遠隔地からの参加申込みが半数以上で、かつ高校生が3分の1にものぼり、オンラ
イン開催の長所が大きく発揮されました。